喜劇を書くって難しい

物語の中に笑いの要素を加えるのが難しい。
人を笑わせるって、どうすればいいのだろう。どんなときに人は笑うのだろう。

戦争に関わる劇脚本をよく書くせいか、笑わせる場面はあまり書く機会がなかった。
しかしある年、やはり戦争について考える脚本のオファーをもらった時、劇団の人に尋ねてみた。
「戦争の話に人を笑わせる要素があってもいいのでしょうか?」
その人は「ありだと思いますよ」と答えてくれた。その答えを聞いて、私は笑いと戦争をテーマにして脚本を書いてみようと思い立った。
取り上げたテーマは禁演落語だ。太平洋戦争期に、色恋物や博打の話など時勢にふさわしくない演題を落語家たちが封印したという史実を取り上げて、笑いの要素のある戦争の話の構想を練り始めた。
話の大筋は考えられた。主人公は現代の女性落語家。彼女が真打に昇進してある名前を受け継ぐ。その先代は戦争中に得意芸を禁演にされて奪われた人だった。という話。
舞台は寄席や噺家の稽古場など。笑いの要素を盛り込まなければ面白くならない。箱書きでストーリーを整理するところまではすんなりできたが、具体的な台詞を書こうとしてキーボードを叩く指が止まった。

人を笑わせる台詞ってどうやって書けばいいのだろう。

そもそも私は普段からユーモアのある会話ができるタイプではない。いろいろ考えて書いてみるが、これでお客さんが笑ってくれるのかと不安になる。笑わせるって、どうすればいいのだろう。
コントの動画を何本も見てみた。面白い。何が面白いのかを考える。ボケる人の突然性とか不条理さ。突っ込む人のタイミング、頻度。参考になることはないかと何度も見直す。そこでハタと考える。やりたいことはこういうことだろうか。自分はコントを書きたいのか。そういう面白さも持たせたいが、それだけじゃないだろう。ヒューマンドラマやアクション映画、サスペンス劇にだって、クスリと笑わせるシーンが出てくるものはいっぱいある。ああいう何気ない笑いを取り入れたいのではないか。

落語で枕を語るシーン
稽古場での師匠とのやりとり
居酒屋で酔っぱらう兄弟子の台詞

お客さんを笑わせたい場面はいろいろあり、笑わせ方は全部違うことに気が付く。そして、どう書けばいいのかをまた悩む。私にとっては喜劇はハードルが高すぎたかと心が折れそうにもなった。
それでもなんとか書き上げた脚本は、うれしいことに評判が良かった。それが「平成七福亭物語ー気楽に笑っていただきます」である。

書くというのは、やはりトレーニング無しには上達しない。書いてみて、お客さんがどんな反応をするのかを見て、また考えて、書いて。
笑わせたい、泣かせたい、ハラハラさせたい。お客さんの感情を動かすことができる物語を書くために、チャレンジを繰り返すしかない。私にとっては、特に笑わせるということはトレーニングが必要だと痛切に思っている。最近は笑わせる脚本を書く機会が減っているので、頭の体操のためにも、そろそろ笑わせる話に挑戦しないといけない。

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