戦争劇の取材をする難しさ
戦争劇の取材について
戦争を題材とした劇脚本を、もう10年以上にわたって毎年書いている。なぜ戦争の劇を書き続けているかというと、脚本を提供している劇団の夏の公演のテーマが太平洋戦争について考えることだからということがもともとの理由なのだが、長年書き続けていると、それがライフワークのようなものになってきて、これからもこのテーマでまだまだ書いていくのだろうなと思っている。
これまでいろいろな題材を取り上げてきた。空襲、建物疎開、身体障害者の戦争、赤紙を配る兵事係、徴兵忌避、禁演落語、英米人にとっての銃後の暮らし……。どのテーマも情報収集には本当に苦労した。
まずは劇のメインテーマを決めるところから始める。今までに読んできた戦争に関する出来事や、当時の暮らしについてなどの資料を無造作に眺めながら、これだと思うものを見つけるまでそれを続ける。メインテーマはどこから降ってくるかわからない。テレビのドキュメンタリーに触発されることもあれば、街を歩いていて戦争の爪痕を見つけることもある。10年以上前に書いた「戦火の杖音」は、京都の町を散策していて「西陣空襲の石碑」を見つけたことがテーマを決めるひとつの要因になった。「記憶ー五条坂の手紙」は、五条坂にある河井寛次郎記念館で床下の防空壕跡を見せてもらったことが脚本の起点になった。戦争のことをいつも頭に置いていると、自然とそういうものが目に留まる。
さて、メインテーマを考えた後が大変だ。それを深掘りするためにはまず資料を探す。はじめはインターネットの情報をしらみつぶしに見る。検索上位に現れる情報はどのページも似たようなことが書いてあることが多い。だから検索結果を20から30ページはめくっていく。とにかくできるだけたくさん読んで、気になったことをメモ帳に書き出していく。学術論文など参考になる文献を見つけたらその著者を記録する。必要によっては著者の方に連絡を試みる。返事がもらえれば、そこから新たな資料が見つかることもある。
それから、戦争の情報収集ではNHKアーカイブスがとても役にたつ。戦争全体の流れを説明するコンテンツだけでなく、市井の人たちの数多くの証言が蓄積され、無料で公開されている。NHKアーカイブスは後世まで残しておかなければならない貴重なメディアだと思う。
ネットでの情報収集を一通り終えると、今度は参考になる書籍を探す。私の場合、まず読みたい書籍を見つけたら図書館で借りる。それが脚本の参考になりそうだと思ったら古本屋でその本を買う。私は、気になるところへは本に線を引いたり書き込みをする。付箋も山ほど貼るので、図書館の本ではそんな扱いができないのだ。
こうしてある程度の知識を得てくると、どうしてもやりたいことが出てくる。それは当時のことを知る人に取材することだ。ところがこの取材が難しい。太平洋戦争が終わってすでに80年になる。当時のことを知っている人は少ない。それにそういう高齢の方に話を聞こうとしても、そのご家族が許可してくれないこともある。そもそも私自身が、会社員をしながら副業で脚本を書いている。専門のライターの肩書を持っているわけではないから、取材の交渉をしても自分の素性をうまく説明できずしどろもどろになる。そんなだから、生の証言を聞くという作業は十分にできないことが多い。
とにかく、こうして何とか集めた情報を整理して、脚本の構想を練っていく。時には十分に調べられないままに書き始めることもある。歴史を研究している専門家の人たちから見れば、私の脚本には調査が行き届いていないと感じる点も多々あることだろう。
ただ、それでも私は戦争を書く。これからも書いていこうと思う。それは、恒久的な世界平和の実現とか、戦争の悲惨な現実を暴露するとか、そんな大義のもとに書こうとしているわけではない。このテーマで10年も書いていると、やはり捨て去ることはできないテーマになってしまった。何かを変えたくて書くのではなく、自分自身が戦争というものを理解するために書いている。そんな風に思う。そして公演には毎年たくさんの人が集まってくれる。私の書いた物語が、劇を観た人たちに何かを考えるきっかを提供できているのなら、心から嬉しく思う。
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